2021/10/30-11/23

Theme : Enlarged Mentality ~他者との世界を共有するもの~

2020年、COVID-19によるパンデミックは私たちの生活を大きく変えました。この急激な変化は私たちの日常生活や経済活動といった現代社会の在り方そのものを問う契機となっています。地域格差や経済格差は深刻さを増し、社会構造の脆弱さを露呈させ、先の見えない状況に不安を抱える日々が続いています。しかし私たちはこの現実と向き合い、新しい未来へ進むことができるはずです。

このパンデミックが明らかにした格差や差別、価値観や文化の違いといった、さまざまな分断を私たちは乗り越えていきたいと考えています。まずはお互いの違いを知り、話を聴き、理解する姿勢を見せること。そして敬意を払うこと。それらを実現していく方法として、今こそ地域の芸術祭が必要です。壊れてしまった日常を取り戻すのではなく、新しい日常を構築していくこと。そのために新しい価値観や思考様式をもたらしてくれる芸術が必要です。

のせでんアートライン2021のテーマは「Enlarged Mentality(視野の広い思考様式)」です。これは哲学者カントの言葉であり、政治思想家ハンナ・アーレントによれば「汝の行為の原理が普遍的な法となりうるようにつねに行為せよ」という思考様式だけでは十分ではなく、「他のあらゆる人の立場で思考し」うることを要件とするとしています。*1 「この視野の広い思考様式は、判断力としてそれ自身の個人的な限界を乗り越えるすべを心得ているが、他方それは、厳密な孤立や孤独のなかでははたらきえない」*2 ものであり、「判断することは、『他者との世界の共有』を可能にする、最重要でないにしても一つの重要な活動様式」*3 です。のせでんアートライン2021では、この思考様式を取り入れ、それぞれの個人が持つ「主観的」な五感や思想や文化を、共有し分かち合う「客観的」な世界に適合していくことで、新しい未来を考える機会を生み出します。

2021年、開催地域である川西市・猪名川町・豊能町・能勢町というこの地で生きている人たちとともに、そこに居合わせるあらゆる人のパースペクティブで見た、歴史・産業・伝統と接続した芸術祭を開催いたします。まず妙見山の「芸能信仰」「北極星信仰」から着想を得た「音」と「光」を中心とする芸術制作を行い、土地の歴史、風土、民俗に由来し人の手によって丁寧に生み出された「食」や「暮らし」を拡張させる取り組みを展開します。これは「文化」の語源となった「CULTIVATE(耕し養う、住まう、気遣う、慈しみ保存する)」を体現する表現であり、芸術を通した「生」の喜びを体験できる場の創造や人との出会いを目指すものです。

2021年秋、まだパンデミックが収束している状況であるといえないかもしれませんが、しっかりとした感染対策を行い、開催を目指していきます。

のせでんアートライン妙見の森実行委員会

*1-3 ハンナ・アーレント著、引田隆也・齋藤純一共訳(1994)『過去と未来の間』(政治思想への 8 試論)(みすず書房)、298-299 頁

開催概要

のせでんアートライン2021 ―「光」と「音」と「食」の芸術祭 ―

会期
2021年10月30日(土)〜11月23日(火・祝)
会場
兵庫県川西市、兵庫県猪名川町、大阪府豊能町、大阪府能勢町
主催

のせでんアートライン妙見の森実行委員会

委員長 三好庸隆(武庫川女子大学教授)
副委員長 坂本哲也(兵庫県阪神北県民局長)
委員 山本正志(大阪府池田土木事務所長)
監事 越田謙治郎(川西市長)
委員 福田長治(猪名川町長)
委員 塩川恒敏(豊能町長)
委員 上森一成(能勢町長)
委員 中野雅文(能勢電鉄株式会社 取締役社長)

プロジェクトマネージャー 前田展広
アートマネージャー 田中郁后
地域マネージャー 大森淳平

共催
阪急阪神ホールディングス株式会社