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会場である日生中央サピエの2階へ向かいました。通路の奥に歩みを進めると、どこか見覚えのあるラックやカウンターが目に飛び込んできました。更に近づくと、マスク越しでもはっきりとわかるコーヒーの豊かな芳香が。よく見ると能勢町の大ケヤキ前にある屋台カフェ「ありなし珈琲」が出店していました。担当者さんがいらっしゃらないか、店主さんに伺ったら、なんと、店主さんは担当者の向井さんでした。
向井さんの前職はIT系企業でソフト開発やプロジェクトリーダーとして11年勤務されたそうですが、ご自身の事を根っからの「商売人」と語ります。聴けば生家は大阪能勢を拠点に燃料店、米穀店、水道住宅設備の事業を営んでおられ、その影響を受けて育ちます。在職中より週末はカフェや卸売りなどの副業を開始し、退職後、珈琲屋として独立されました。
そんな向井さんに、プロジェクト「Tsugu.」についてインタビューしました。
まず、プロジェクト名の「Tsugu.」って、どんな意味があるのですか?
「Tsugu.」とは、漢字の「継ぐ」から来ています。主に阪急阪神百貨店で、役目を終えた棚やディスプレイに使用する什器を、新たに事業を開始する方に継いで使っていただくことで、起業家支援や地域活性化につなげたいと考えています。
向井さんの周りには、起業を考えている方が多くいらっしゃるのですか?
実は、「ありなし珈琲」の他にも、珈琲店を営んでおり、また前職は教育関係の仕事をしていたことから、珈琲塾を立ち上げてコーヒーの淹れ方だけでなく仕入れ等のノウハウも教えています。生徒さんが増えていく中で、珈琲店を開業したい、自分の実力を試せる場が欲しいという方が出てきたのですが、資金面や準備する期間が難しく、当初は「プレオープンズ」という期間限定のテナントとして出店してもらっていました。
生徒さんの中に、イズミヤからH2O リテイリングに出向された方がおられ、私の地域活動をサステナブル推進室の方にご紹介くださったことから、今回のプロジェクトにつながりました。
いよいよTsugu.プロジェクトの始まりですね。
阪急阪神百貨店さんは、ブランドイメージもあるため、使わなくなった什器やディスプレイを他店で転用されてこられませんでした。年間結構な予算をかけて処分されている話を伺い、それならばオークションをして、これから起業を考えている方、既に起業されている方にリユースしてもらうことで、起業家支援、地域で循環していくシステムを構築できればと思いました。
オークションに参加された、事業所の所長さんにお話を伺いました。
以前から向井さんを存じており、このオークションの事を直接伺いました。意中の品は、天板が木目のテーブルで、事務所の休憩室にと思い入札しました。所内で使用しているのはスチール製の什器なので休憩室にはナチュラルな風合いのテーブルの方が、社員がリラックス出来ていいかなと思いました。
向井さんの思い。
今、お勤めの方、リタイヤされた方、主婦の方など、ご自身の夢や自己実現を目指す方が増えています。組織の中で個々のスキルを重ねていくのは難しい。ならば独立や副業として、今やっていることをブラッシュアップし、生活の糧にしていく事を前提にやっていけるよう様々な角度から応援していきたいと思っています。
取材日:2021/11/3
文・写真/てつこ