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イベントレポート

2022.03.24

【地域プロジェクト】のせでん食材探訪イベント開催レポート

【地域プロジェクト】のせでん食材探訪イベント開催レポート

のせでんアートライン2021の最後を飾るクロージングイベント「野外シアター」の初日11月20日(土)に、能勢広域の食材を再発見するプロジェクト「のせでん食材探訪」から生まれた、地域の食材を活かしたスープが振る舞われました。

「のせでん食材探訪」を主宰したのは料理人の中田淑一さん。
辻調理師専門学校でフランス料理を学んだ後、フランスの併設校に日本人スタッフとして赴任。帰国後も同校で教鞭を執るかたわら、国内外のセミナーで食育や地産地消を推進し、料理人としては2000年に九州・沖縄サミット、2019年にG20サミットで料理を担当されました。
2021年に同校を退職して、同年12月に豊能町ときわ台にフランス料理店「Le tonton」をオープン。大事に育てられた野菜をふんだんに使い、“食べられる幸せ”を感じてもらう料理を提供しており、好き嫌いやアレルギーはもちろんのこと、小さな子どもがいる人や、病気の影響などで外食を諦めている人でも食べられるスープの商品開発にも取り組まれています。

 

野外シアターに到着

会場となる能勢町の旧東郷小学校グランドへ到着すると、すでに野外シアターで映画が上映されていました。
来場者は車内外でFM受信などの方法により音声を聴きながら体育館の壁に映される映像を観て、作品を楽しんでいました。

 

こだわりの白菜スープ

スープの提供のため、中田さんが会場にやってきて、さっそく来場者に提供するスープの準備にとりかかります。

今回中田さんが作ったスープは、地元豊能町の白菜を、文字通り「余すことなく」使い、最低限の調味料を用い丁寧に調理することで、素材の持つポテンシャルを引き出すことを追求したこだわりの一杯です。

あらかじめお店で調理したものを持ってきての提供でしたので、調理の様子は見れませんでしたが、作り方についてお話をうかがうことができました。

白菜の旨みを引き出す

白菜は付け根以外すべてを使います。まず白菜を細かく刻み、芯の部分をオリーブオイルと少量の塩で炒めたのち、とろとろになるまで蒸らします。

そこへ葉の部分と水、北海道利尻産の昆布を粉末にしたものを加えて蓋をして煮込みます。そして、長崎で作られるこだわりの米麹を加えるのですが、米麹は高温を嫌うため、60度以下までクールダウンさせてから入れ、加熱しすぎないように火加減を見ながらじっくり煮込むそうです。

蒸らした際に鍋の蓋についた水蒸気にも白菜の旨みが含まれるそうで、それをヘラで丁寧にとるこだわりに、白菜のポテンシャルを引き出すことへの執念を感じました。

 

野菜には野菜の言い分がある

スープはこれで終わりではなく、1日寝かせ、白菜から出る水分をみながら味を調整するという手の込みよう。「野菜には野菜の言い分がある」と話すように、白菜と対話しながら、提供直前まで味を整えられていました。

そうしてこだわり抜いて出来上がったスープが来場者に配られると「本当に美味しい」「白菜だけのスープとは思えない」といった感嘆の声が。

私もスタッフとしてこのスープをいただきましたが、白菜がまるごと体の中にしみ込んでくるような、白菜を飲んでいるような感覚で幸せな気持ちになりました。

 

エスプリは料理の中に

12月某日、中田さんのお店にランチをいただきに行きました。

野菜の声を聞き、食材の良さを十二分に感じることができるコース料理で、野菜のスープがメインの後にやってくるという構成にとても驚きました。こだわり抜かれた肉料理の後に飲む12種類の野菜を丁寧に煮込んだスープが、からだの隅々にまで染みわたり、このコースのストーリーを満喫する頃には「からだが喜んでいる」という感想が頭の中に浮かんできました。


毎日豊能、能勢の農家さんを訪ねまわり、現地で仕入れた野菜からメニューを考えているという中田さん。この日はコースの中で49種類もの野菜が使われていました。
野菜だけでなく、肉や魚も仕入れたものでメニューを試行錯誤し、最も美味しいと思える一皿を提供する姿勢を知ることで、野菜の味がより一層引き立ちます。

「のせでん食材探訪」は地域の食材を再発見し、新しい解釈と試みを生み出す中長期プロジェクトです。中田さんの料理は地域の食材がふんだんに使われ、お店に行くと野菜を活かすエスプリ(精神)を随所に感じられますので、ぜひお店へ足を運んでいただき、感動を共有してほしいです。

 

取材日・2021/11/20
取材/文/写真・相澤翔平

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