COLUMN
インタビュー2019/11/11
【地域プロジェクト】認定NPO法人 箕面こどもの森学園インタビュー
キッズワークin 里山~里山でお仕事、手作り、腹いっぱい~
民主的に生きる市民を育むことを目的とするオルタナティブスクール「箕面こどもの森学園」。自由で創造的な教育方針が共感を呼び、定員を超える入学希望者が集まるほどです。小中学校の運営のほか、里山地域での土曜教室やイベント企画などの地域活動も積極的に行い、持続可能な社会のあり方や生き方を提案しています。のせでんアートラインでは「キッズワークin里山」として、里山の魅力を感じられるイベントが行われる予定です。教育や地域活動を通して実現していきたいことについて、校長の藤田美保さんにお伺いしました。
■教育と地域活動を通して「持続可能な社会」を実現
――「箕面こどもの森学園」ではどんな教育をされているのでしょうか。
藤田:箕面こどもの森学園は、子供たち一人ひとりの個性を尊重し、民主的に生きる市民を育むことを目的とする認定NPO法人で、現在は小中学校合わせて約60人がこちらで学んでいます。学校と言っても画一的なカリキュラムをこなすのではなく、お互いを尊重しあう関係を作ることで違いを認め、感性や知性を育むことを目指しています。2015年にはESD(持続可能な開発のための教育)を実践している学校としてユネスコ・スクールも認定された「オルタナティブスクール」です。
――学校運営以外にも、さまざまな活動をされているそうですね。どんな取り組みなのですか。
藤田:私たちは教育を通じて「持続可能な社会」を目指したいと考えています。ですがその実現のためには、従来の教育を変えていくという取り組みだけでは不十分だと感じたんです。そこで、理想の生き方や暮らし方を提案できるような地域活動も行うようになりました。一例を挙げますと「ロハスinこどもの森」というスローフードやフェアトレードのお店が集まるイベントの企画・運営、大人を対象とする講座の開催などですね。また、子育て支援の一環として、「子育てハッピーアドバイス」という講座を開催したり、3~5歳のお子さんとその親御さんを対象とした月2回の土曜親子クラス「そら」を運営したりもしています。学園の敷地内で行うものが多いですが、今年から川西市の黒川公民館(旧黒川小学校)を使わせていただけることになり、「そら」はそちらに場所を移すことになりました。
■2校目の開校を目指し里山地域との繋がりを深める
――土曜親子クラス「そら」を川西市の黒川公民館に場所を移されたとのことでしたが、学校は箕面市にありますよね。この地域に来られたきっかけは何でしょうか。
藤田:私たちの教育方針に賛同していただける機会が増え、小中学校は定員を超える志願者が集まるようになりました。そこで、新たに2校目をどこかに作りたいと考えていて、数年前から場所を探しているんです。目指す教育のあり方にふさわしい場所はどこだろうかと考えた時、やはり大量生産・大量消費で成り立つ都市部よりも、人との繋がりを大切して地産地消の生活ができるような里山地域がふさわしいのではないかと。できれば廃校になった場所を使えたらと思い、能勢町や豊能町でいろいろな人にお話を伺っています。地域のシンボルだった学校の跡地を使用させてもらうとなると、事前に地域との信頼関係をしっかりと築く必要がありますので。1年ほどかけて地域に足を運び、お付き合いをさせていただいていたのですが、ある時「川西市にもお話してみたら」とアドバイスがあり、担当者の方を紹介してもらうことになりました。その際に、黒川公民館を活用したいというお話をいただいたんです。公民館は学校として運営するには少し狭かったのですが、ちょうど土曜クラス「そら」も今の場所が手狭になっていて、こちらも里山地域が望ましいと考えていたので、今年から土曜クラスを黒川公民館で開催することにしました。
――新たな学校の用地を探している過程で、先に土曜親子クラスの場所が見つかったのですね。
藤田:そうなんです。学校を1つ作るとなると、やはりそれなりの時間がかかります。「そら」は小規模であることや月2回開催ということもあり、学校に比べれば場所を探しやすいかもしれないですね。この地域を知ってもらいたいという地元の方のニーズや、子育て世代が求めているものとも上手くマッチしたのだと思います。「そら」では子どもたちは泥んこ遊びや川遊び、自然素材を使ったアートづくりなど、自然の中で様々な体験ができます。一方、親御さんはお子さんとは別で、学習会やクラフトなどに取り組んでいただいています。お陰様で大変好評でして、さらに回数を増やして受入れ人数を増やす必要がでてきていますね。
――のせでんアートライン期間中に行われる「キッズワークin里山」は、里山の魅力を感じられるプログラムだとお聞きしています。これまでに築き上げてこられた地域の人との繋がりが生かされるのでしょうか。
藤田:そうですね。「そら」の運営をしながら、工作に使う自然素材や、食材をご提供いただくために、黒川はもちろん能勢町や豊能町にも積極的に足を運んできました。その過程でできた関係性は、今回の「キッズワークin里山」にも生かされています。しめ縄づくりで使う藁や、干し柿づくりの柿は能勢の方からご提供いただく予定です。会場も「のせマルシェ」担当の方から「子供たちが喜ぶ企画がほしいからぜひ一緒にやろう」とお声がけいただいて、同時開催させていただくことになりました。手作り体験やワークショップ、お仕事体験イベントも企画していて、親子で里山を楽しんでいただけるプログラムをたくさん用意していますよ。
■魅力的な教育の場づくりで地域を盛り上げたい
――理想の教育や社会のあり方を考え、その実現に向けて活動しておられますが、地域の魅力づくりにも大いに貢献される内容なのではないかと感じました。今後、地域とどのように関わっていきたいとお考えでしょうか。
藤田:私たちの教育に共感してくださる方は、能勢や豊能、川西市のような里山での暮らしに興味を持っておられる方も多いです。実際に子供の教育のために家族で移住をしてこられる事例もありますし、土曜親子教室「そら」のために地域へ定期的に足を運ぶことで、交流人口の増加にも繋がると考えています。廃校利用を目指す2校目についても、私たちだけで一つの建物を運営するのではなく、行政サービスや地域の魅力に繋がるNPOなど、複数で運営して地域のハブのような場所になればいいですね。地域の方たちと共に魅力ある町づくりに貢献できればと願っています。
藤田美保(ふじた・みほ)
小学生のとき、『窓際のトットちゃん』を読み、自由な学校に憧れる。その後、小学校教諭を経て大学院に進学し、市民による学校づくりを目指す。2004 年に「わくわく子ども学校」(現:箕面こどもの森学園)常勤スタッフとなり、2009年から箕面こどもの森学園
校長。現在は、ESDの学校を中心とするSDGsのまちづくりを目指す。共著に『こんな学校あったらいいな ~小さな学校の大きな挑戦~』築地書館、2013 年。『気候変動の時代を生きる~持続可能な未来へ導く教育フロンティア~』山川出版社、2019年。『みんなで創るミライの学校~21世紀の教育のカタチ~』築地書館、2019年。
●キッズワークin里山
http://noseden-artline.com/2019/localproject/noseden-198/
●能勢かほる — キッズワークin 里山~里山でお仕事、手作り、腹いっぱい~
http://noseden-artline.com/2019/event/noseden-285/
インタビュー日・2019/10/01
インタビュアー/文・油井康子