COLUMN
レポート2019/12/10
【地域プロジェクト】能勢妙見山芸能上達プロジェクト開催レポート
「能勢妙見山芸能上達プロジェクト」は、かつて歌舞伎役者や芸能関係者が多く参拝されてきた歴史的経緯を踏まえ、のせでんアートライン2019を契機に芸能の世界との関わりを再構築する試みです。会期中は、アーティストに芸能上達の御祈祷を受けていただき、「星嶺」にてパフォーマンスなどの奉納ライブを行っていただきました。奉納ライブに出演されたのは、古川真穂さんと加美幸伸さんと、一般公募から選ばれた黒猫クレマさんです。
11月10日(日)午前10時、少し肌寒い気温とまっ青な秋晴れの空、能勢妙見山「開運殿(本殿)」において「芸能上達を願うご祈祷」がスタートしました。
厳かな殿内に、お経を読む声と、一定の間隔で叩かれる木魚の音、そして時々鐘の音が響きわたっています。だんだんと引き締まっていくような、心が洗われていくような、そんな心地よい時間が過ぎていきます。
こちらはご祈祷後の黒猫クレマさん。3人のユニットですが、この日はお2人がご祈祷を行いました。お札と黒猫クレマさんの公演案内チラシを持って、開運殿(本殿)前でパチリ。
聖嶺入口に掲げられた本日のプログラム。
第一部は、能勢妙見山の思いに共感し、以前から能勢妙見山と親交が深いアーティスト、歌手の古川真穂さんと、FM COCOLOでDJをされている加美幸伸さんが出演。演目の「『かたりな』のその先・・・」は、今年3月にも加美幸伸さんが演出し、古川さんが演じた「古川真穂一人だけ芝居『かたりな』」に加えて、「その先・・・」のパフォーマンスを2人で演じられます。
11時になり、最初に地域ブランディングプロデューサー大森淳平さんからのせでんアートラインにおける地域プロジェクトと、この後のパフォーマンスに関する説明がありました。
第一部「『かたりな』のその先・・・」
加美幸伸さんの太くしっかりした声でのナレーションから物語は始まります。
主役である古川真穂さんの登場シーン。息を呑むような美しさと美声です!
古川さんが演じるのは、心を癒しに訪れた山で、ある1本の木に夢中になった女性。彼女は後ろ髪をひかれつつ帰らないといけない時間が来たので、木のもとを立ち去っていきます。木は女性を待ち続けるも、いつまで待っても彼女は戻らない。そのうちに台風により木は傷み倒れてしまいます。その後、ようやく戻った彼女は倒れた木を見て、後悔の念を抱きます。そして……木となって生きていくことを決意するのでした。
ここまでが3月に公演のあった「かたりな」のストーリーです。そんなストーリーを幻想的に美しく表現するお2人。
一度、舞台袖に消えた古川さんが、鮮やかな深紅の衣装をまとって登場するところから、「『かたりな』のその先・・・」が始まりました。赤い血の木として生きることを決めた女性。でも、他の木たちと自分は違う。自分だけに赤い血が流れている。その思いを、加美さん演じる古木にぶつけながら、様々なことを教えられます。古木は語ります。
「昔は、人と木が一緒に暮らしていた。でも今は違う……」
それを聞いて、彼女は思います。これから私はどうしていけば良いのだろう……?
最後に、古川さんの独演。心に染み入る演技とふり絞るような美しい歌声。聴き惚れました。
パフォーマンスが終わった後、お2人に加え、このイベントの主催である能勢妙見山の広報室室長を務める吉井麻里子さんも交えながら、この物語の背景が語られました。妙見山のブナの森を訪れた加美さん、古川さんが感じた癒しの力、それをどうやって伝えるか? 悩んだ2人が、自分たちにしかできないこととして選んだのが芝居だったこと。妙見山でブナを守っていくことへの想いが詰まったトークでした。
トークが終わってから、ブナ森の見学へ
暗闇で光るキノコです。
(夜のブナ森の散策は大変危険ですので、もし見に来られる方がいらっしゃいましたらご注意ください!)
去年の台風で倒れたブナの大木。このまま倒れたままで朽ちていき、森の生き物たちの栄養となっていきます。
第二部「Miss Poppins and a litte boy」
ブナの森の見学の後、第二部は先ほどご祈祷を受けた黒猫クレマさんによる「Miss Poppins and a litte boy」(ポピンズさんと、ちいさなおとこのこのおはなし)。黒猫クレマさんは、俳優の中村真利亜さん、コーポリアルマイムアクターの古田敦子さん、物語作家の坂本見花さんの3人によるユニットです。3人とも普段は育児に追われるなか、新しいことをしたいという思いで立ち上げられました。
黒猫クレマさんが行うパフォーマンスは、Close theatre(クロースシアター)という形式になります。Close theatre(クロースシアター)は舞台上ではなく、観客と俳優が一緒に座るテーブルで上演されます。そして、物語のあとにはカフェタイムが! 始まる前から期待が膨らみます。
物語作家の坂本見花さんから説明があった後、演技は始まりました。とても印象的な声とともに、場の空気感が一気に切り替わります。
お客さんが目の前に座った状態での演技は、臨場感があります。
会場の周囲に置いた古い電話やコーヒーカップなど、いろいろな小物を使って演技が進んでいきます。
演技終了後に自然な流れでカフェタイムがスタート。張り詰めていた空気がふっと緩みます。
カフェタイムスタート!
コーヒーは「自家焙煎珈琲 天使のはしご」さん。お店は構えず、猪名川町を拠点に、珈琲の販売や、珈琲講座、イベント出店をされています。黒猫クレマさんとは初の共演。ここでも、のせでんアートラインによって新しい出会いが生まれました!
今日のパフォーマンスにちなんで、天使のはしごさんがイギリスの珈琲文化について説明されました。1700年代は男性だけが入れるコーヒーハウスが沢山あって交流の場になっていたそうです。今でもイギリスには2万軒を超えるコーヒーショップがあるとのこと。
そして、イギリスを含むヨーロッパの人たちはエスプレッソを飲むことが多いということで、今日のために用意されたのは、完熟レーズンのようなコクと甘みをもった「ブラジルエスプレッソレディ」(南アメリカ)と、フルーティーな香りと少しの酸味と甘みをもった「ブルンジAA」(アフリカ)のブレンド。香ばしいコーヒーの香りが漂います。
テーブルを囲み会場のさまざまな場所で、いくつもの会話が生まれています。リラックスした雰囲気のなか、いつまでも続きそうな楽しい時間でした。
最後に
今回ののせでんアートライン2019をきっかけに実施した「能勢妙見山芸能上達プロジェクト」は、これからも芸能の世界との関わりをつくる取組みを進めていきます。芸能の道を究めたい方は、芸能上達のご祈祷、奉納に参拝してみてください。きっと天空に浮かぶ不動の星・北極星の神様、妙見さんが後押ししてくれることでしょう。
最後に、美しい青空を。この日はほんとに良いお天気でした。このお天気のように今日出演された2組の未来が明るいものになることを祈りたいと思います。
取材日・2019/11/10
文/写真/取材・嶺倉栄