のせでんアートライン2019 避難訓練

COLUMN

#2

デコるヘッドマークワークショップ

インタビュー2019/10/11

【地域プロジェクト】デコるヘッドマークプロジェクトチームインタビュー
デコるヘッドマークワークショップ〜妙見の森ケーブル〜

「のせでん沿線の新たな価値を創出する事業や取り組み」を目指し、地域住民から生まれた様々なローカルプロジェクトのインタビュー記事をお届けします。
第一弾は、能勢電鉄の車両のヘッドマークをデコレーションするワークショップ。沿線にお住いの方が、普段乗っている電車に自分が関わる「非日常」を提案する取り組みです。デコるヘッドマークプロジェクトを立ち上げた植松陽一さんにお話をお聞きしました。

 

 

能勢電鉄との出会い

―植松さんはどういう経緯でこの地域や能勢電鉄とつながるようになられたんでしょうか?

植松:私自身、子どもの頃からボーイスカウトでよく妙見口駅方面に足を運んでいました。黒川駅からケーブルに乗り、山上からリフトに乗って登山ルートを巡る活動をしていたんです。

大人になって当時は宝塚造形芸術大学だった宝塚大学造形芸術学部に勤めることになりました。そこで、産学連携事業として能勢電鉄さんと一緒に「子ども体験学習」という自然の素材を使ったものづくりのプロジェクトが始まり、宝塚大学の学生がアテンドスタッフとして参加するつながりが始まりました。

そして2013年の能勢電鉄株式会社開業100周年でのせでんアートラインのアートプロジェクトの募集があって、それで私たちも応募することにしたんです。その時にこのデコるヘッドマークワークショップが生まれました。

【地域プロジェクト】デコるヘッドマークプロジェクトチームインタビュー

―大学ではビジュアルコミュニケーションデザインを担当されているとのことなのですが、それはどういった内容なんでしょうか?

植松:ビジュアルコミュニケーションデザインとは視覚で情報伝達することですが、「人と人をつなぐ」ことだと大学で教えています。電車でいうと一つはヘッドマークだと考えています。ヘッドマークはそのデザインの中に鉄道沿線の雰囲気や要素が入っています。そういう意味では、鉄道とそれを見る人とをつなげていることになります。

私たちはこのワークショップで、普段沿線を利用されている地域の人とヘッドマークを一緒に作ります。そしてそれを電車に取り付ける。作品はとても素朴ですが、鉄道の味を引き立てています。この企画によって、参加者のみなさんは日常では関わることのできない物を作ることになります。ある意味とても非日常的な体験で、のせでんアートラインでしかできないことだと考えています。

今までたくさんの方に参加していただきましたが、みなさん想像以上に楽しんでくれました。アンケートでもまた参加したいという声が多く、自分たちの取り組みに対しても手応えを感じましたし、私たちの取り組みでたくさんの人が笑顔になる。だからとてもうれしかったですね。あとやはりファミリー層に人気が高いワークショップだと感じています。それに、女性の参加も多くみられました。

実は能勢電鉄の車は名車揃いなんですよ。最新の7200系、6000系、5100系、3100系、そして1700系など、一つひとつの車両に歴史があります。自分が作ったものが大好きな電車に取り付けられるというのも大きな魅力なのではないでしょうか。

【地域プロジェクト】デコるヘッドマークプロジェクトチームインタビュー

日常で、例えばワークショップ実施中に予期しないことがあったときに、どのように対処していくのか

―このワークショップの魅力は「非日常」を体験できることなんだとおっしゃいましたが、そこから日常の生活の中へ派生していくこともたくさんありそうですね。

植松:普通に生活していて、電車のヘッドマーク制作に関われることはほとんどありません。のせでんアートラインがあって、能勢電鉄が会社全体で動かれているからこそ、このワークショップは実現することができました。やっぱり物を作るというのは楽しいけれど、それを実際に使われている車両に取り付け、たくさんの人に見てもらえるというのは、制作するだけではなく大きな喜びを感じてもらえるのではないかと思います。
また、参加者の方には地域イベントに参加しただけというだけではなく、日常の当たり前の風景に自分たちが関われたことを感じてもらえるとうれしいですね。

ワークショップは今回で8回目です。これまでスタッフとして関わってくれた学生は社会人になっています。今回は社会人になった当時の学生が数名スタッフとして手伝いに帰って来てくれます。もしこれまでの参加者がまた参加してくれたらあの時一緒に制作したスタッフとの再会にもなるかもしれません。そういう人と人との出会いはつながりとなるので、ワークショップを続けていくことは一つの醍醐味だと感じています。


―確かにそれは地域にとってもとても有意義なことですね。いわゆる「関係人口」が増えるということになりますよね。その他にもどういった効果を生むと思われますか?

植松:私は朝起きて仕事して家に帰る、という日常的な生活が体質的に合わないんです(笑)。
毎日乗っている電車にも(さっき来た電車と違うな。例えば同じ形式でもどこかが違う。なんでだろう?)というような疑問を持ちます。

毎日生まれてくる面白い疑問やミッションみたいなことを順番にやっていく。だからワークショップでなにか予期しないことが起こったときに「どのように対応して発展させていくのか」ということにワクワク感を感じます。これは問題解決の方法に好奇心や探究心をもって対応することで、また違った何かを発見できることだと思っています。


能勢電鉄の楽しみ方

―最後に、能勢電鉄の楽しみ方を教えていただけますか?

植松:能勢電鉄の車両には物語があります。創業当初の能勢電鉄の復刻色の車両があったり、形式も様々です。また都会でスイッチバックという運行方式が見られるのも能勢電鉄だけです。そのスイッチバックを見ることができるのは山下駅です。

他にも見どころのある駅を挙げると、車庫がある平野駅はやっぱり見ているだけで楽しいですね。それから駅のホームの下の方、見たことありますか? 丸い石が積まれているのは昔のホームの名残なんですよ。そんなところを見ていると駅にも様々な歴史があります。まるで時が止まっているような非日常を感じることもできます。

そんな鉄道の面白さと、大阪から1時間未満でこんなに自然の驚きを楽しめるというのは能勢電鉄の魅力だと思っています。今回の、のせでんアートライン2019ではそういったところも同時に体験してもらえるとうれしいです。
 
 

【地域プロジェクト】デコるヘッドマークプロジェクトチームインタビュー

植松 陽一(うえまつ・よういち)

兵庫県尼崎市出身。
子どもの頃から、阪急沿線在住。阪急神戸本線そして今は阪急宝塚本線。マルーン色の車は、わたしの日常の中の一つ。そのマルーン色の車で、非日常となるように今回デコるヘッドマークワークショップを展開出来る事をこの上ない幸せと感じています。のせでん電車の中でも、特にお気に入りなのは青春時代を感じさせてくれる1700系1757号車と7200系7230号車と7280号車。
 
 

インタビュー日・2019/09/20
インタビュアー・前田展広
文・前田展広/田中郁后

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