COLUMN
レポート2019/12/13
【地域プロジェクト】 能勢かほるー蜜蝋を使った商品づくりワークショップ体験レポート
Beekeeper(養蜂家)にとって最適な環境の能勢で新しいチャレンジがスタートします
11月23日(土)、秋晴れの空の下、のせでんアートライン2019 地域プロジェクト「能勢かほる」のマルシェが開催されました。その中でもBeekeeper(養蜂家)として、ミツバチと向き合いながら、新たな取り組みにチャレンジしている和田隆さん(「Wild Honey 風気庵」)のプロジェクトは蜜蝋を使った商品づくりのワークショップです。
“和田さんのハチミツ”は、能勢・豊能界隈のマルシェに通う人たちや地元の人たちの間では知る人ぞ知る銘品です。その無添加・非加熱のハチミツは、ミツバチがミツを集める植物(蜜源)や季節、巣箱が置かれる場所などによって、色・香り・味がそれぞれ異なりとても風味豊か。
一さじひとさじ、それぞれの瓶から丁寧にハチミツの違いを体験させてくれる和田さん。ハチミツの説明だけでなく、ミツバチと植物を中心とした自然の営みに至るまで広く話される姿には自然学の先生のような風格すら感じます。
では、さっそくワークショップを体験してみましょう!
そもそも蜜蝋(みつろう)って何?
今回のワークショップで作ることができるのは、蜜蝋を温めて溶かしたものを少しずつ大きくして作る「みつろうろうそく」。そして熱を加えながら、布に少しずつ蜜蝋を染み込ませて作る「みつろうラップ」の2種類です。
ここで使用している蜜蝋(みつろう)というのは、ミツバチの巣を構成する蝋(ろう)のことです。これは働きバチの腹部の腺から分泌されたもので、主成分はパルミチン酸ミリシル。巣を加圧圧搾したり、お湯で煮溶かしたりして採取します。
蜜蝋を上手に使えば、環境にも人の暮らしにも役立ちます。この日、和田さんは蜜蝋を固めたものを持ってきてくださいました。
和田さんは「能勢周辺は、養蜂する環境が整った素晴らしい地域。今回の未来のBeekeeper(養蜂家)を育てるプロジェクトにたくさんの方に関わってもらいたいと思っています」とおっしゃっていました。
この日のワークショップはキャンドル作家の入江さん、里山保育の「きららの森の家」の稲原さんがお手伝いされ、もうすでに蜜蝋プロジェクトによってコミュニティができている様子も伝わってきます。
ほんのり蜜の香り漂うキャンドルづくり。親子で楽しむクリスマス準備
「キッズワークin里山(http://noseden-artline.com/2019/column/noseden-1144/)」を体験したお子さんがちょうどみつろうろうそくのワークショップに来てくれました。指導してくれるのは、「いりえのアトリエ」の入江るみさんです。いつもは、お寺のろうそくをリユースして、素敵なキャンドルを自らデザインして作っておられるのですが、この日はシンプルなみつろうろうそくを教えてくださいます。
テーブルのお鍋の中には溶けた状態の蜜蝋。
ここに核となる小さな蜜蝋がついたものをそっとくぐらせ、熱を冷ましながらゆっくり蜜蝋に浸したり出したりしながら、徐々にキャンドルになる部分を大きくしてゆきます。途中で形を整え何度も繰り返します。
冬が始まる季節に親子でゆっくりキャンドル作りができたら、クリスマスを迎える準備にもいいですね。
小さかったろうそくが、ここまで大きくなりました。みつろうろうそくはほんのりとハチミツの優しい香りがします。
繰り返し使えるみつろうラップは、プラスチックフリーの時流で最近密かにブーム?
もう1つのワークショップは、「みつろうラップ」。プラスチックゴミの減量の取り組みは今や地球規模の取り組みとなり、大手コーヒーチェーン店のストローが紙製に変わるニュースなども聞こえて来ます。また私たちもレジ袋の有料化によってスーパーへエコバッグを持って行くのが当たり前になってきました。そんななか、私たちの日常でよく使われるのが食品ラップです。この“何度でも使える”みつろうラップは(実は私は初めて知ったのですが汗)、エコ意識やトレンドに感度が高い女性を中心に、密かなブームになりつつあるそうです。
蜜蝋は、保湿効果や抗菌効果があると言われており食品に対しても安心して使えます。また冷たくなると固まり、温かくなると緩やかになるという特性があるので、みつろうラップに加工すれば繰り返し使用でき、地球にも家計にも優しい商品になります。手のひらで温めて変形させ、食品を包んだりお皿やコップの蓋にして使います。
みつろうラップを作って見せてくださったのは、里山保育園「きららの森の家」の代表 稲原さんです。子供たちの豊かな感性を生かした保育環境を求めて、能勢に来たとおっしゃるだけあり、保育園の保護者の皆さんでみつろうラップを作るワークショップをされたこともあるとか。
蜜蝋のチップを布の上に乗せ、アイロンで温めながら伸ばしていきます。丁寧に使えば、1年くらいは保つそうです。
みつろうラップやろうそくといった環境に優しい商品を実際に作ってみるワークショップを体験し、普段何気なく使っている便利なものを少し横に置いて、蜜蝋の可能性やその用途について考えることは、自分の日々の生活を振り返る良いきっかけになりました。
蜜蝋はその安全性から、子ども用のクレヨン、家具などのワックス、化粧品・保湿クリームなど、直接肌に触れるたくさんの日用品に使われています。一見、便利そうに見える消費生活の反対側に、心のゆとりや豊かさを見つける人も多いように感じます。和田さんたちの新しいプロジェクトに大きな可能性を感じたワークショップでした。
取材日・2019/11/23
文/長屋公美子
写真・取材/東野佳穂・東好美