のせでんアートライン2019 避難訓練

COLUMN

#24

インタビュー2019/11/16

【地域プロジェクト】社会福祉法人 豊悠福祉会 地域活性化活動インタビュー
福祉を通じて町を元気にするプロジェクト「祥雲館町おこしプラザ」

豊能町吉川を中心に、複数の福祉施設を展開する社会福祉法人豊悠福祉会祥雲館(以下祥雲館)。デイサービスや特別養護老人ホーム、障がい者就労継続支援事業など、地域の高齢者や障がい者を対象とした福祉サービスを提供する一方、施設に勤務するスタッフで運営しているプロジェクト祥雲館町おこしプラザ」を通じてさまざまな地域おこしに取り組んでいます。福祉の領域にとらわれない活動の数々や、のせでんアートライン期間中に開催される「森の芸術祭2019」について、権神ひろみさんと滝本弥生さんに伺いました。

 

 

施設内の夏祭りを地域住民と共に楽しめるイベントに発展

 
――「祥雲館町おこしプラザ」とは、どのようなプロジェクトなのでしょうか?

権神:祥雲館は豊能町吉川に拠点を持ち、特別養護老人ホームやデイサービスといった高齢者福祉と、就労継続支援などと障がい者福祉事業を運営する社会福祉法人です。「祥雲館町おこしプラザ」は、祥雲館のスタッフと地域の方々とが中心になって様々なイベントを企画するほか、祥雲館と地域住民が同じ目線で地域福祉について語る福祉カフェ「笑雲Cafe」を定期的に開催しています。

祥雲館では開設当初から利用者様向けの夏祭りを行っていたのですが、諸般の事情により、中止しました。しかし、地域の方から夏祭りを復活してほしいとご要望をいただき、夏祭りを復活させることになりました。その際、単に施設イベントと位置付けるのではなく、地域の風物詩として定着するよう企画・運営を祥雲館と地域の皆様との協働で実施し、地域の幅広い世代の方に喜ばれるものにしようということになり、5年前の夏に第1回祥雲館町おこしプラザ「森のカーニバル」として開催しました。そうして、祥雲館町おこしプラザのイベントは「森のシリーズ」として年3~4回、テーマを決めて開催する形になったのです。現在は、今年初開催の「祥雲館TOYONOCOLLECTION」、夏イベント「森のフェスティバル」、そして今年はのせでんアートライン期間中の開催となる秋イベント「森の芸術祭」を実施しています。「祥雲館TOYONOCOLLECTION2019」は、施設の利用者や地域住民の方がモデルとなったファッションショーです。結婚式ができなかった方がウェディングドレスをお召しになったり、皆さん思い思いのファッションでランウェイを歩いていて、とても感動的でしたよ。
 

【地域プロジェクト】社会福祉法人 豊悠福祉会 地域活性化活動インタビュー

 
――ファッションショーの写真を拝見しましたが、皆さん活き活きとしていて素敵ですね! 福祉法人でありながら、施設を利用されていない地域の方も楽しめるイベントを主催されるのはなぜでしょうか。

滝本:祥雲館は福祉を通じて、豊能町のいいところをPRする営業代理店のような機能を果たしたいと考えています。福祉というと、なんとなく暗いイメージを持つ方も多いのですが、実際はここで暮らしている利用者は、元気な方もたくさんいらっしゃいますし、関わってみると楽しいこともたくさんあります。人口減少や少子高齢化というマイナスイメージで捉えられがちな豊能町ですが、そこに暮らしていらっしゃる方々はバイタリティにあふれた素敵な方がたくさんおられます。人が魅力、人が財産の豊能町をファッションショーという形でアピールしようと考えました。また、若い方、学生の方にも気軽に福祉の場に足を運んでもらえるようなイベントができればとも考えていました。もう一つ、「豊悠プラザ」という元は豊能町保健福祉施設だった建物を祥雲館で承継することになったのも、地域住民の方が集ういただくイベントをすることになったきっかけです。豊能町の財産を使わせていただくのですから、施設の利用者だけではなく地域に開かれる形で活用すべきだと考えたんです。今では、地域の方だけではなく、電車に乗って遠方から来てくださる方もいらっしゃいます。


――「森の芸術祭2019」はどんなイベントなのでしょうか。

権神:「祥雲館町おこしプラザ」は、福祉で豊能町の魅力を発信するイベントの開催と運営を旨としています。「森の芸術祭2019」は、名前のとおりアート(芸術)を通して豊能町の魅力を発信するイベントです。豊能町在住のアーティストや作家さんにご協力いただき、豊能町にある伝承や民話をモチーフにした企画を実施しています。豊能町内に、フリーソフトでプロジェクションマッピングを制作し、地元小学校のイベントで上映されている方がいらっしゃるのですが、その方に協力をいただき、豊能町の魅力を発信できる映像を豊悠プラザの建物を利用し上映しています。豊能町の昔話や町の行事が取り入れられて、とても好評ですよ。今年は「光と影」をテーマにしていて、地域のママさん達で結成されている影絵劇団の公演や、2017年アートラインプロデューサである友井隆之さんによる行灯づくりのワークショップ、地域クリエーターさんのマルシェなども予定しています。
 

【地域プロジェクト】社会福祉法人 豊悠福祉会 地域活性化活動インタビュー

イベントをきっかけに繋がりが広がる

 
――福祉施設でのお仕事をしながら、本当に様々なイベントを企画・運営しておられますね。イベントを通じて、以前と変化を感じることはありますか。

権神:私たちは実際にステージで演じたりお店を出したりするのではなく、地域で創作活動をしている方や飲食店の方にお声がけして、この場所を利用していただきたいと思っています。地域のボランティアの方も毎回20~30人くらい関わっていただき、とても頼りにしています。地域の子供ダンスチームや太鼓チーム、作家や創作活動をされている方に参加していただくことで、祥雲館に多くの住民が集い、地域や福祉の魅力を知ってもらえたらと思っています。

滝本:イベントを始めた当初は、町内のどこで、誰が、どのような活動をしているか分からないことだらけで、手探り状態でしたね。地元の婦人部の方がすごくよくしてくださって、いろんな人を紹介していただき、人から人へ繋がっていくことができました。イベントが回を重ねるうちに、地域住民の方から「参加したい」と手を挙げていただく機会も増えています。初夏に行う「森のフェスティバル」では、地域の子供を対象に能勢電鉄の絵を募集しイベント会場で展示する“のせでんの絵コンテスト”を行っています。イベント終了後、能勢電鉄車両内にも絵が展示されるので、それを見に応募者の方やそのご家族が遠方から来られることもあるようです。

権神:私は普段はケアプランセンターでケアマネジャーとして働いているのですが、イベントに関わることで地域の人の繋がりがすごく広がり、声をかけていただく機会も増えました。町おこしと福祉の仕事の両方に関わることで、地域を丸ごとケアさせていただいているという実感があります。
 
 

町おこしの理念に共感した若い世代が福祉の道へ

 
――町おこしの活動をされるなかで、お仕事上の変化はありましたか。

権神:イベントでは、施設見学や相談ごとなど、気軽に声をかけていただけるように「相談受付コーナー」を設けています。「家族の様子がおかしい」「そろそろ介護が必要になるかもしれない」などといった相談を受けて、行政や支援事業所に繋ぐケースもあります。介護が必要になったとき、最初は誰に相談すればいいかわからないという方も多いので、この町おこしイベントをきっかけにして、気軽に声をかけていただければ嬉しいです。

滝本:リクルートでも、祥雲館町おこしプラザの活動に共感して、他府県からこちらに就職を決めてくれた学生もいます。近年、社会福祉業界の採用は難しくなってきています。福祉現場で働きながら地域に貢献できることに魅力を感じてくださる方も多いですね。現在、祥雲館では20代の職員が全体の1~2割ですので、豊能町全体の人口比率からすると若い世代が多い職場だと思います。

権神:若い世代の職員が増えることは、祥雲館にとっても、地域にとっても嬉しいことで、地域活性化に繋がると思います。移住まではいかなくても、この町に関わる若い世代が増えることは喜ばしいですね。
 

【地域プロジェクト】社会福祉法人 豊悠福祉会 地域活性化活動インタビュー

元気な町で、誰もが福祉に親しめる環境づくりを

 
――福祉法人として、町の一員として、これから目指すことを教えてください。

権神:今年9月、祥雲館は、福祉複合施設「祥雲館ヴィレッジ・エン」を新たにオープンしました。サービス付き高齢者向け住宅、障がい者グループホーム、障がい児デイサービス、そして本日のインタビュー会場になっている地域交流スペース「EN-GAWA」の4つの機能を兼ね備えた施設です。オープンにあたって、アートラインの地域プロデューサーである前田さんにも地域交流スペースのコンセプトづくりに関わっていただきました。新たな施設やイベントを通して多くの人が集まり、支えあう場所を増やしていきたいですね。

滝本:町おこしイベントや新施設の活用などをとおして、この町の人たちの温かさを感じています。これからも、より多くの方に地域のつながり、支えあう関係がEn-GAWAから生まれるといいなと思っています。

権神:“何かあったら祥雲館”と地域の皆様からの期待に応えられることを目標として活動してきましたが、今後は“何があっても祥雲館”とさらなる信頼を得られるよう地域福祉に貢献していきたいと思います。
 
 
 

【地域プロジェクト】社会福祉法人 豊悠福祉会 地域活性化活動インタビュー

左:滝本 弥生(たきもと・やよい)
法人全体の広報や採用活動を担当。現在、祥雲館ヴィレッジ・エン地域交流スペース「En-GAWA」で、地域のアンテナ拠点となるよう、情報発信など行っている。トヨノノレポーター、とよのわたし研究室1期生。

右:権神ひろみ(ごんじん・ひろみ)
ケアプランセンター祥雲館の介護支援専門員。特別養護老人ホーム祥雲館の設立時(2000年)メンバー。2014年「祥雲館町おこしプラザ」発足以来、プロジェクトメンバーとして地域向けイベントの企画運営に携わり、現在、イベントプロデューサーとして、活動している。

◆祥雲館町おこしプラザ
http://noseden-artline.com/2019/localproject/noseden-192/
◆森の芸術祭
http://noseden-artline.com/2019/event/noseden-291/
 
 
 

インタビュー日・2019/10/01
インタビュアー/文・油井康子

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